「家族の思いと本人の気持ちの間で」— 入居を迷うご家族へのアドバイス

「家族の思いと本人の気持ちの間で」— 入居を迷うご家族へのアドバイス

高齢のご家族の入居を検討する際、「安全に暮らしてほしい」という家族の思い と、「できるだけ自宅で過ごしたい」という本人の気持ち の間で悩むことは少なくありません。特に、認知症や身体の衰えがある場合でも、本人が「まだ自分でできる」と感じていると、施設への入居を拒むことがあります。

今回は、生活相談員として関わった実際の事例をもとに、以下のポイントについてお話しします。


1. ご本人の気持ちに寄り添うことの大切さ

入居を検討する際、まず大切なのは、ご本人の気持ちを尊重し、丁寧に耳を傾けること です。
「介護を受けるのは終わりだと思う」「まだ自分でできる」と感じている方に対して、無理に説得しようとすると、不安や抵抗感が強まってしまいます。

ポイント:

  • ご本人が「なぜ入居したくないのか」という理由を理解する
  • 「自分の意思を尊重してもらえた」と感じてもらうことで、安心感が生まれる

例えば、ある入居者様は、「人の世話になるのは申し訳ない」と入居を拒んでいましたが、「施設は自立した生活を続けながら、必要なときにサポートを受けられる場所」 と伝えることで、徐々に心を開いてくださいました。


2. ご家族の気持ちと負担を理解する

ご家族が入居を希望する背景には、「安全に暮らしてほしい」「自分だけでは支えきれない」という思い があります。特に、介護の負担が大きくなると、心身の疲労や罪悪感に悩まされることがあります。

ポイント:

  • ご家族には「介護の負担を軽くすることは悪いことではない」と伝える
  • 入居によって、ご本人もご家族も**「無理なく過ごせる環境」** を整えることが目的であると説明する

入居後、ご家族が「もっと早く相談すればよかった」と安心されるケースも多くあります。


3. 入居を前向きに考えてもらうためのアプローチ

ご本人が入居に不安を感じるのは自然なことです。そのため、「施設に入ることで、どんな良いことがあるのか」を具体的に伝える ことが大切です。

例:

  • 「安全な環境で暮らせる」 → 転倒や服薬ミスのリスクが減る
  • 「人との交流が増える」 → 孤独感が軽減され、心が安定する
  • 「自立した生活を続けられる」 → 必要な部分だけサポートを受けられる

特に、認知症の方の場合、「ここなら安心できる」と感じる環境 にいることで、不安や混乱が和らぎます。


4. 入居後の不安への対応(帰宅願望がある場合)

入居後、ご本人が**「やっぱり家に帰りたい」** と訴えることがあります。これは、認知症の方だけでなく、誰にでも起こりうる自然な感情です。

対応方法:

  • 「今すぐ帰る必要はないですよ」 と優しく声をかけ、気持ちを落ち着かせる
  • 「今日はここでゆっくり休みましょう」 と提案し、不安を和らげる
  • 家族との面会や電話を通じて、「一人ではない」という安心感 を提供する

例えば、ある入居者様は最初こそ「帰りたい」とおっしゃっていましたが、職員との交流やレクリエーションを通じて徐々に施設の生活に慣れ、今では**「ここに来てよかった」** と笑顔を見せてくださいます。


5. 生活相談員としての役割

生活相談員として、私たちは**「ご本人の気持ち」と「ご家族の思い」の両方を大切にしながら、最適な解決策を見つけるお手伝い** をしています。

  • ご本人には**「できることを続けながら、安心して生活できる場所であること」** を伝えます
  • ご家族には**「介護の負担を軽減することで、より良い関係を築ける」** ことを理解してもらいます

私たちの役割は、単に入居を勧めることではなく、「その方とご家族にとって最善の選択を一緒に考えること」 です。


まとめ

入居を迷うご家族にとって、最も大切なのは、「ご本人が安心して暮らせる場所を見つけること」 です。
ご本人の気持ちを尊重しながら、安全で快適な生活を送るために、私たち生活相談員がサポートします。

もし、「このまま自宅で暮らして大丈夫だろうか?」 と悩んでいる場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
一人ひとりの状況に合わせて、最適な支援をご提案させていただきます。