「長年同じ訴えを続ける入居者への対応」— 生活相談員の視点から

介護施設で長く働いていると、特定の入居者への対応に悩むことがあります。特に、長年にわたり同じ話を繰り返し、職員や他の入居者への不満や悪口を言う方がいる場合、施設全体の雰囲気や職員の負担にも影響を与えます。

今回は、そうしたケースに対して施設としてどのように対応すべきかを考えていきます。


1. 8年間同じ話を繰り返す背景とは?

8年もの間、特定の話を続けているということは、本人にとっては非常に強いこだわりがあるということです。以下のような要因が考えられます。

  • 認知機能の変化:新しい情報よりも過去の出来事が記憶に残りやすい
  • 施設への不信感:「誰も自分の話を信じてくれない」「自分は大切にされていない」という思いが強い
  • 人間関係のストレス:他の入居者との関係がうまくいかないことで、攻撃的な発言をする

2. 施設としてできる対応策

① 言動の記録を残し、パターンを把握する

まず、本人の言動を職員間で共有し、どんな時に話し始めるのか、どのような状況で悪口が増えるのかを把握します。
例:記録に残す内容
✅ 話し始めるタイミング(特定の職員と接した後、食事の前後など)
✅ 誰に対して発言しているか(職員・入居者・家族)
✅ 感情の起伏(怒りが強いのか、不安が強いのか)

記録を続けることで、「特定の場面で悪口が増える」「特定の職員や入居者に対して強い不満を持っている」などの傾向が見えてくるかもしれません。

② 対応を統一し、刺激を減らす

職員によって対応がバラバラだと、入居者が「この人なら話を聞いてくれる」と話し続けてしまうことがあります。
対応を統一し、「ここまでは聞くが、それ以上は流す」というルールを作ると、話の長時間化や不満の増幅を防ぐことができます。

例:「職員が盗んだ」と言われた場合の対応ルール
✅ 「それは不安でしたね」と共感する(ただし深堀りはしない)
✅ すぐに別の話題に切り替える(「今日はご飯何が美味しかったですか?」など)
✅ 長時間続く場合は、「またゆっくりお話しましょうね」と区切る

③ 他の入居者への影響を最小限にする

悪口を聞かされた入居者が不快な思いをしないよう、できるだけ距離をとる工夫が必要です。

  • 席替えやユニットの調整:特定の人との接触を減らす
  • グループ活動の参加を制限:「この方と一緒だとトラブルになりそう」という場合、自然な形で別グループに誘導する

④ 家族と連携し、退所の可能性を探る

「ここを出たい」と言いながらも施設に残りたいという矛盾した発言をされているとのことですが、職員や入居者への影響を考えると、退所の選択肢も視野に入れるべきかもしれません。

家族がいる場合は、家族に現在の状況を正直に伝え、転居の可能性を相談することが重要です。

  • 「現在、○○さんが他の入居者や職員に対して強い不満を持ち続けています」
  • 「このまま生活を続けるのが、ご本人にとって本当に良いのかを一緒に考えたいです」

家族が難色を示す場合は、外部のケアマネージャーやソーシャルワーカーと連携し、本人の今後の生活について話し合う場を設けるのも一つの方法です。


3. まとめ:施設全体の対応が重要

長年同じ話を繰り返し、悪口や不満を口にする入居者は、施設全体の雰囲気や職員のメンタルにも影響を与えることがあります。

✅ 対応を統一し、職員の負担を減らす
✅ 記録をとり、どのような状況で話が出るのか分析する
✅ 入居者同士のトラブルを防ぐため、環境を調整する
✅ 家族やケアマネージャーと連携し、退所の可能性も含めて検討する

「どんな人でも受け入れなければならない」というわけではなく、施設全体の環境を守るために、時には退所を提案することも選択肢の一つです。

職員が疲弊しないよう、施設全体で協力して対応していくことが大切ですね。